入学してから、随分経った。
それは、6月も半ばの頃だった・・・。
寮での夕食を終え、フラフラと寮の外で夜風に当たっていると、
「わっ!大変だ!!」
と言う声が、俄かに聞こえた。

オレが何事かと思い、声の方に駆けつけると・・・。
寮の塀の上に、まかないの飯田さんが飼っている猫の『お鈴』が飄々と歩き、
その下で、クラスメイトのアイツがオロオロとしていた。
普段はイケメンでカッコイイアイツ。
何をオロオロしてるのか不思議に思ってると、
アイツはオレに駆け寄り、声を荒げたんだ。

「あ、いいところに!大変なんだ!!猫が塀に登っちまったんだ!!!」

・・・・・・・・。
一瞬、何を言ってるのか良く解らなかった。
猫が塀に登るのは普通じゃないのか?お鈴は塀の上が大好きだぞ。
でも、アイツはお鈴が塀の上から降りれなくなってると思ってるらしい。
見た目はイケメンでカッコイイのにな、アイツ。
中身はかなりの勢いで、天然バカだ。
ポケーっとしてるオレに、アイツは焦れて、もう一度声をかけてきた。

「なぁ!塀の上に・・・どうしよう!!」


A 解った・・・。じゃぁ、急いで用務員さんから脚立を借りてくるよ!!

B へぇーーーーーーーーー。