ひと悶着の後、オレはアイツの部屋へと訪れた。
アイツは助けた猫を抱きかかえて、バツの悪そうな顔をしていた・・・。

「ゴメンな・・・笑っちゃうよな。猫が塀に登ってるだけであんな、大騒ぎして」

アイツはお鈴の毛並みを揃えながら、
そのふさふさな毛皮に、顔を埋め、そしてオレに、こう言ったんだ。

「昔、猫飼っててさ。でも、歳くって弱くなっちゃってさ・・・いつも登ってた塀の上から落ちちゃったんだ」

それが元で、死んでしまったアイツの猫。
それ以来。猫が塀の上に登ってると、心配で心配でならないんだと、アイツは言った。
そうだったのか・・・。
そうとは知らずに、オレは――。

アイツが猫の喉元を撫でると、お鈴はゴロゴロと嬉しそうに喉を鳴らした。
そっか、アイツ、本当に猫が好きなんだな・・・。
なんだか、凄く嬉しそうな顔で猫と遊んでるよ。
見た目はカッコよくてイケメンなのに、なんかカワイイよな・・・コイツ。
オレがそんな事を思いながら、アイツの横顔を見つめていると

「よし!今日はオレと一緒に寝るか!!!」

ドキッ!!!
アイツの突然の言葉に、心臓が唐突に高ぶる。
え?!い、一緒に寝るだって?!!えぇ?!!!
・・・・・
だが、アイツのその言葉は、オレではなく、目の前にいるお鈴に向けられていた。

「明日になると、飯田さんの元へ戻っちゃうモンなぁ〜」

あ、あぁ・・・な、なんだ。猫に言ったのか。
な、何を勘違いしてんだ?オレ。もしかしてオレ、こ、こいつの事・・・もしかして。

そんな動揺しまくりのオレなんて、露知らず。
アイツは、お鈴ばっか弄んでやがる。
あ〜ぁ。全く・・・。


A いっそ、オレが猫になって・・・アイツに弄ばれたいモンだぜ!!!

B アイツが猫だったら・・・オレがいくらでも、弄んじまうんだけどなぁ〜!!!