ＡＭ９：３０ 金閣寺
ここは洛西にある金閣寺。
縁夷逗学園の生徒達は、２日間お世話になった『旅館柴田』にお別れを告げ、３日目の最初の観光目的地、金閣へとやってきたのでありました。
金閣寺は観光ガイド等にも必ず載っている、京都屈指の観光地。
ですが、本や写真で見る金閣寺と、生で見る『生金閣寺』とでは、また違った印象があります。
辺りを紅葉で彩られながら、黄金色の舎利殿を水面に映し出すその姿は、現実に見るとため息が出るほどの美しさを感じるのでありました。
从#~∀~）つ＜ほら、お前ら見てみ。
从#~∀~）＜池の水面に金色の舎利殿が映し出されてるやろ？
从#~∀~）＜あれが有名な金閣寺やでーー！！
川*´･_･｀ﾘ＜うわーーーーー！！！
川*´･_･｀ﾘつ＜これが金閣寺かぁ！！すごーーい！！
从*´∇｀）＜うん！チョー凄いよね！！まっキンキンだよね！！
从#~∀~）つ＜やろ？！ギンギラギンにさりげなくやろ！！
川*＾∇＾)∩＜うん！凄いカッコイイです、中澤先生！！！
川*＾∇＾)＜なんかさぁ！一度さ、住んでみたくない？！金閣寺って！！
从*´∇｀）＜ねぇ！住んでみたい！！
从*´∇｀）∩＜絶対、お金持ちになった気分だよね！！
そんな感じで、すっかり大興奮の２年B組の生徒達。
あまりの大興奮に、さりげなく中澤が言った昭和丸出しの表現にも、
これだけツッコミ要員がいながらも、誰一人気づかないほどなのでありました。
だが、その一方で。
このまっキンキンすぎる金閣寺の風貌を、
イマイチ好きになれない反対派がいるのも、また事実。
从oﾟ ‐ﾟ从＜うーーーん。
从oﾟ ‐ﾟ从＜確かに派手やかではあるけど・・・。
从oﾟーﾟ从つ＜なんかキンキラすぎて、インチキ臭いよね。
ﾉﾉ ∂_∂ﾙ＜そーだね。
ﾉﾉ；∂_∂ﾙ＜なんか。成金趣味って感じする。
ﾉﾉ ∂_∂ﾙ∩＜あんまさ、趣味良くない感じだよね。
州*‘ ‐‘ﾘ＜うん！成金趣味で、良くないもん！！！
从oﾟ ‐ﾟ从つ＜そもそも、金閣寺ってさ、足利時代に建てられたんでしょ？
从oﾟ ‐ﾟ从＜なのになんで、こんなキンキンなんだろ？綺麗すぎてウソ臭いよね。
ﾉﾉ ∂_∂ﾙ＜そーいえば、そーだね。６００年ぐらい前に建てたはずでしょ？
すると。
そんな夏焼と須藤の歴史的疑問を、
近くにいた石村が、まるでハイエナの様に聞きつけてきたのでありました。
そして、いつもの様に得意気に歴史語りをするのであります。
从*’w’)∩＜え？金閣寺がなんでこんなに綺麗かって言った？
从oﾟ ‐ﾟ从＜あ、舞波・・・。
ﾉﾉ；∂_∂ﾙ oO（うわっ。きちゃった・・・・ウザ・・・）
从*’w’)＜ふふふ。確かに金閣は、
从*’w’)つ＜1397年に西園寺家より北山の山荘にあった別荘地を足利義満が譲り受け。
从*’w’)＜それを改築し、今の鹿苑寺を作り出したんだ。
从*’w’)つ＜だから、金閣も勿論、その頃に作られたモノなんだけど・・・。
ﾉﾉ ∂_∂ﾙ oO（・・・ん？鹿苑寺？）
从*’w’)＜金閣寺は、三島由紀夫の名作『金閣寺』や、水上勉の『五番町夕霧楼』の題材になってる通り、
从*’w’)つ＜1950年に放火にあってるんだ。
Σ 从oﾟ ‐ﾟ从＜え？！マジ？！放火されたの！！
从oﾟ ‐ﾟ从つ＜じゃぁ、今の建物はその後に再建されたんだ？
从*’w’)∩＜そう！！だから、こんなに金ピカなんだよね。
从oﾟーﾟ从＜へーーー。そうなんだ？なるほど！！
从*’w’)＜うん！そう！！
从*’w’)∩＜ちなみに、生八ッ橋の｢夕子｣は、
从*’w’)つ＜『五番町夕霧楼』のヒロインの「夕子」から名前を取ってるんだよ？！
Σ 从oﾟーﾟ从＜マジで？！それはトリビアだね！！！
ﾉﾉ；∂_∂ﾙ＜そーなんだ。全然知らなかった！！
州*‘ o‘ﾘ＜すごい！！！舞波っち！！
从*’w’)つ＜でしょ？！で、で、で。他に鹿苑寺に関して、何か質問はある？
・・・・ぶっちゃけ。
鹿苑寺の歴史語りよりも『生八ッ橋の｢夕子」』の由来に一番食いついていた夏焼達だが、
なにはともあれ珍しく、石村のウンチク話に関して好意的な生徒達。
そんな幸せに気を良くした石村が、にわか質問教室を開催すると、
夏焼が不思議そうな表情を浮かばせ、手をあげるのでした。
ﾉﾉ ∂_∂ﾙ∩＜はーーい。質問
从*’w’)＜なに？みや。どんな質問？どんな質問？
ﾉﾉ ∂_∂ﾙつ＜いや。さっきから舞波が言ってる、『ろくおんじ』って何かなって思って。
从*’w’)＜あぁ！鹿苑寺ね！！
从*’w’)つ＜鹿苑寺とは、金閣寺の正式名称！！
从*’w’)＜金閣寺があくまで通称なんだよ。
州*‘ o‘ﾘ＜へー。そうなんだ？「ろくおんじ」って言うんだ？
从*’w’)＜そう。鹿に苑に寺で鹿苑寺。
ﾉﾉ*∂_∂ﾙ＜え？！鹿！！？？
鹿と言う単語に、すぐさま過剰反応する、鹿バカ夏焼。
さっきまで金閣寺を「なんか成金趣味で悪趣味だよねー！」と言っていた夏焼ですが、
「鹿」のたった一文字に、30秒前に言った言葉を一瞬で撤回します。
ﾉﾉ*∂_∂ﾙ＜そっか、金閣寺の正式名称は、
ﾉﾉ*∂_∂ﾙ＜鹿の苑のお寺で鹿苑寺なのか〜！！
ﾉﾉ*∂_∂ﾙ∩＜いいね！チョー、センスいいね。義満さん！！
ﾉﾉ*∂_∂ﾙ＜やるじゃん、義満！！
Σ 从；’w’) oO（天下の征夷大将軍様を、「やるじゃん、義満！」呼ばわり！！）
从；ﾟ ‐ﾟ从＜そーかな？名前はともかく、悪趣味じゃない？キンキンで。
ﾉﾉ*∂_∂ﾙ＜そんな事ないよ！あたしも、ゴールドのアクセとか好きだし。
ﾉﾉ*∂_∂ﾙ＜ゴールドってオシャレだし。
ﾉﾉ*∂_∂ﾙ∩＜金閣寺、カッコイイよね？梨沙子！
州*‘ o‘ﾘ＜・・・・・・・え。
州*‘ ‐‘ﾘ＜うん！！金閣寺、カッコイイ！！！
从；ﾟ ‐ﾟ从 oO（うわ！梨沙子も一瞬で前言撤回した！！）
从；’w’)＜まぁ、金閣寺を気に入って貰えたなら嬉しいよ・・・。
こうして。
２年B組の生徒達が金閣寺の前で、記念写真を撮ったり、歴史語りをしたり。
各々に観光を楽しんでいたのでした。
だが、金閣寺の観光をしている折、ふと清水はある事に気づきます・・・。
川 ´･_･｀ﾘ＜・・・・・・・・。
Σ 川 ´･_･｀ﾘ＜あれ？！！
从oﾟ ‐ﾟ从＜ん？どーしたの？佐紀ちゃん。
川 ´･_･｀ﾘ＜あ、いや・・・。
川；´･_･｀ﾘつ＜そー言えばさっきから、ももを見ないなぁーと。
从*´∇｀）＜え？
从*´∇｀）＜そーいえばそーだね・・・。
ﾉﾉ ∂_∂ﾙ＜そんなん。観光サボって、別のトコに行ってんじゃない？
从*´∇｀）∩＜もも、一匹狼派だし！！
从oﾟーﾟ从∩＜ロンリーウルフだし！！
クラスメイトが１人見当たらない事に対し、
「もも、ロンリーウルフだし！」と言う一言で終えてしまうあたりが、２年Ｂ組たる所以。
もしもこれが２年Ｃ組で、対象が鈴木だった日には、今頃、地元青年団に捜索願を出している事態でしょう。
しかし・・・。
いくら嗣永が「平成のロンリーウルフ」とは言え、どうにも清水にはピンと来ないのでありました。
川 ´･_･｀ﾘ＜うーーーん。
川 ´･_･｀ﾘ＜確かにももはすぐ、１人でどっか行っちゃう人だけど・・・。
川；´･_･｀ﾘ∩＜でも。ももの性格を考えるとさ、絶対に金閣寺にガッつくキャラだと思うんだけどな。
川；´･_･｀ﾘつ＜だってさ。金のお寺だよ？ココ・・・。
从*´∇｀） ﾉﾉ ∂_∂ﾙ＜・・・・・・・。
从；´∇｀） ﾉﾉ；∂_∂ﾙ＜確かに。
１００ｍ先から10円が落ちる音すら聞き分ける耳と、
池の中に落とした100円玉の匂いすら嗅ぎ分ける事の出来る鼻。
そんな、脅威の身体能力（対小銭用）を持つ嗣永。
その嗣永が、金閣寺を前にして姿1つ見せないのが、
むしろ清水たちにとって、不気味極まりないのでありました・・・。
ﾉﾉ；∂_∂ﾙ＜もしかしたら、すでに・・・。
ﾉﾉ；∂_∂ﾙつ＜柱の金箔、２・３枚引っぺがして逃げてるのかもしれないね――。
川 ´･_･｀ﾘ＜・・・・・・・・。
川l|l´･_･｀ﾘ＜ありえる。
川；´･_･｀ﾘ∩＜と、ともかくももを探そう！！
川；´･_･｀ﾘつ＜ももの将来の為にも、犯罪は未遂で済まさせてあげるべきだよ！！！
从；ﾟ ‐ﾟ从 ﾉﾉ；∂_∂ﾙ 从；´∇｀）＜うん、解った！！！
こうして。
ちょっと金閣寺で見当たらなくなっただけで、
すでにクラスメイトから犯罪者扱いされている嗣永ですが・・・。
そんな級友達の心配（罪人扱い）を他所に、
嗣永は鹿苑寺の片隅にあるお茶席のベンチで、１人、手紙を読み耽っていたのでした。
薄いピンク色の和紙に書かれた、カワイイ丸文字の手紙。
手紙の最後には、「会えるのが凄く楽しみです♪」と書かれていて、嗣永がその言葉に思わず嬉しそうに微笑むと・・・。
すぐ近くから、俄かに、嗣永を呼ぶ声が聞こえたのでした。
州*‘ o‘ﾘ oO（あれ・・・？ももだ・・・）
Σ 川*＾∇＾)＜ん？！
川*＾∇＾)∩＜あ、いたいた！！
ﾙ ’‐’ﾘ＜？
川*＾∇＾)∩＜ももちいたー！ねぇ、そんなトコで何してんのー？
ﾙ ’ｰ’ﾘ＜あ。んー。別にぃ〜。
ﾙ*’ｰ’ﾘつ□＜旅のしおりで、この後の日程を確認してただけだよ。
川*＾∇＾)＜そっか。いないから心配したよー。
ﾙ*＾ｰ’ﾘ＜ゴメンゴメン！！
州*‘ ‐‘ﾘ＜・・・・・・・・・。
サッと手紙をしおりの間に挟み、
何事も無かった様に熊井の問いに答える嗣永。
嗣永が犯罪を犯していたワケではなかった事を確認でき、熊井も思わずホッと息を呑むのでした。
・・・だが。
菅谷だけは、何もいえぬまま、思わずその場に黙り込みます。
熊井は全く気づいている様子はありませんが・・・菅谷はちゃんと気づいていたのでした。
嗣永が何か手紙の様なモノを見ながら、嬉しそうに微笑んでいた事も。
そして、その手紙をコッソリと、しおりの間に挟んだ事も――。
それはピンク色の、可愛らしい便箋でした。
州*‘ o‘ﾘ oO（さっき手紙を見てたとき。凄い嬉しそうだった）
州*‘ ‐‘ﾘ oO（本当に、恋人でもいるのかな？もも・・・）
今朝方。
菅谷が見た・・・嬉しそうに誰かと電話をする嗣永。
そして今。嬉しそうに微笑みながら、手紙を読んでいた嗣永。
そんな、普段決して見ることの出来ない嗣永の様子に、なんとも言えない疑問を感じつつも、
菅谷は夏焼の言葉通り、金閣寺での嗣永の不穏な様子も、他のクラスメイトには告げることはしませんでした。
そして夏焼にだけ、こっそりとこの時の様子を報告するのでありました・・・。
川*＾∇＾)∩＜次は龍安寺でエンジョーーイ！！！