えりかの『舞ちゃん反抗期』日記



それは℃-uteのダンスレッスンの日。
その日は朝から、とっても寒い日でした。

「みんなー!お蕎麦来たってーーー!!!」

そう言って、出前のお蕎麦のお盆を両手に抱えて、控え室に現れたのは舞美。
そう!いつもは大抵、お弁当とかだけど・・・今日は凄く寒い日だったので、スタッフさんが出前のお蕎麦を頼んでくれたのでした。
ふわふわと真っ白な湯気が立ち昇るお蕎麦に、ちっさは超~ゴキゲン!!
「うわーー!!超~おいしそーー!!!」
「ちっさは確か、天ぷら蕎麦だったよね?」
「うん!そう!舞美ちゃん!!」
お盆をテーブルの上に置き、甲斐甲斐しくみんなにお蕎麦を配ってあげる舞美。
ニコニコ笑顔のちっさに「熱いから気をつけなよ?」と言って、お蕎麦のどんぶりを渡してあげる舞美は、まるでちっさのお父さんみたい!
うふふ。じゃぁ、私がちっさのお母さんになってあげようかな?!舞美1人じゃ、子育て大変だもんね♪
ほら、千聖!お蕎麦が冷めないうちに食べなさい。お母さんがふーふーしてあげるわよ?なんだったら、舞美のお蕎麦も・・・ふーふーして・・・うふふ!

愛理もちっさと一緒で天ぷら蕎麦。なっきぃは卵とじ蕎麦。栞菜はカレーうどん。舞美は肉うどん(大盛り)。
それぞれに、それぞれの出前が配られて行き、みんな熱々のお蕎麦になんだか笑顔が溢れんばかり。
わたしも、大~好きな鍋焼きうどんをお盆から手に取り、大満足!わー!すっごい、あったかそーー!!
そして千聖が、いの一番にどんぶりの蓋を開けると、モワッとした湯気が上空へと登ってゆき、湯気の間からは、おいしそーな大海老天が2本も登場!!!

「うわっ!!凄いよ、えりかちゃん!!観て!!!海老が2本も乗っかってる!!!」
「良かったねー!!ちっさ!!」

まさか、こんなデッカイ海老ちゃんが2本も乗っかってるなんて思わなかったみたい。
ちっさはどんぶりを手に持ち、嬉しそうにわたしと舞美の方へと天ぷら蕎麦を見せてくれたの。
ふふ。カワイイんだから、千聖は・・・。
良かったわね、舞美。えりかと舞美の子は、こんなに元気にすくすくと育ってるわよ、舞美。

でも。
そんなおおはしゃぎするちっさを他所に・・・。
物凄く冷静でホワホワした声が、不意にわたしたちの斜向かいから聞こえてきたわ。

「あ・・・ねぇ、千聖」
「ん?」
「その天ぷら蕎麦。そっちが多分、あたしのだー。返してーー」
「・・・・・・・・・・はぁ?!!」

振り向くと、そこに座っていたのは愛理だった。
と、突然なに?!ってゆっか、「その天ぷら蕎麦、あたしの」ってどーゆーこと?
だって2人とも『天ぷら蕎麦』なんだから、別に、どっちでも一緒じゃないのかな?
そして、ちっさもわたしと同じ疑問を感じたらしく・・・「え?返してって・・・一緒でしょ?」と不思議そうに愛理に問いかけたわ。
だけど。愛理から返ってきた返答は、とてつもなく――とてつもないものだったの!!

「ん~?一緒じゃないよー。だって千聖は『天ぷら蕎麦』でしょ?」
「うん・・・」
「あたしは『上天ぷら蕎麦』だもん」
「・・・・・・・・・・は?」
「多分、こっちが千聖の天ぷら蕎麦だよーー」

そう言って愛理は、自分の手元にあった天ぷら蕎麦を千聖に渡したの。
すると・・・愛理が千聖に渡した天ぷら蕎麦は・・・。
なんと。なんと!!!

「えぇえええー!!海老が1個しかないじゃん!!」
「それはそーだよ。だってそっちは、『上』じゃないんだもん」
「え・・・え・・・?」
「たぶん、上天蕎麦の方が、海老2個だと思うから・・・そっちがあたしのだと思うんだぁ。返してーーー」
「・・・・・・・・・・・」

そして――。
当たり前の様に、愛理にどんぶりごと没収されてしまったちっさ。
代わりに千聖の目の前に置かれたどんぶりは、海老が一個だけの天ぷら蕎麦。ただの天ぷら蕎麦。下の天ぷら蕎麦。
ちっさは、もはや唖然として微動だに出来ない様子・・・。
一方の愛理は、『上』な天ぷら蕎麦を含み、口をもぐもぐさせながら・・・。
「別に自腹切るワケじゃないんだから、千聖も上天蕎麦にすれば良かったのにぃ~。」
と、抜けしゃーしゃーと言っている。
お、鬼がいるわ。助けて、舞美!!℃-uteに鬼ッ子がいるわよ!!


やがて――。


「うわぁああ!!ちくしょー!!!なんであたしは、上天蕎麦を頼まなかったんだーー!!」

そう叫びながら、
控え室の床に崩れ落ち、何度も何度も地面をコブシで叩いている千聖。
あぁ~!!!落ち着いて、千聖!!控え室の床に罪はないわ、落ち着いて!!!

「落ちつきなよ!!し、しかたないよ。ちっさ!!」

もはやご乱心状態の千聖の元へ、なっきぃもすぐさま駆けつけてフォローしてあげている。
そうよ!落ち着いて、千聖!!
気持ちは凄くわかるけど、仕方ないの!!落ち着いて!!!

「地面を叩いたって海老は増えないでしょ?ちっさ!!」
「でも!!でも!!!なんであたしは『上天蕎麦』を頼まなかったんだー!!クッソーーーー!!!」
「仕方ないよ・・・。あたしたちはまだ未熟だから!!『天ぷら蕎麦』の大人な響きに惑わされて・・・その先にさらなる『上天蕎麦』が存在してる事に気づけないよ!!」

千聖の背中をさすり、一生懸命フォローしてあげる優しいなっきぃ。
うん、そうだよね!!フツー、気づけないよね!!!天ぷら蕎麦に『階級』があるなんて、思わないよね!!!?
気づかなかったのは仕方ないよ。千聖は悪くない!!
悪いのは、回りの空気を読まずに、当たり前のよーに『上』な天ぷら蕎麦を頼んだ、あのオンナよ!!
『みんな仲良し』が信条の博愛主義な℃-uteに、ヤツはカースト制度を持ち込んだのよ!!とんでもない人権蹂躙だわ!!ヒトラーおじさんだわ!!!
でも――。
当の愛理は、全く周りの空気に気づいていないみたい。
美味しいモノを食べてる時の、いつものフニャフニャ笑顔で「わぁ~。車海老おいしー!!ぼーーのーーー!!」とか叫んでる。
くいしんぼーのに載せる為かしら?写メまでとってるわ。
そっか・・・愛理のは車海老なんだ。やっぱ凄いね、上層階級の天ぷら蕎麦は。
ちっさのは、なんか芝海老っぽいけど・・・すっかりシュンとしちゃってるちっさに、これ以上のダメージは与えられないから、それは黙っておいてあげよう・・・。



そんな感じで――。
すっかりと盛り上がっている(千聖のみ盛り下がっている)℃-uteの控え室に、
学校行事で遅れてきたまいちゃんが到着したのは、わたし達がお蕎麦を食べ初めて5分後の事だったわ。
「あ、まい!おはよーーー!!!」
そう言って、すでに18時すぎなのに、爽やかな笑顔で「おはよう」を告げる舞美。
ふふふ。もうすっかり日も暮れてるのに・・・。
舞美の頭の中は、まだまだめざましテレビの時間帯なのね。大塚さんにヨロシクね、舞美。
でも、舞美が「おはよう!」って言うと、夕方なのに、確かに早朝の駒沢公演のような爽やかさだわ。わたしまで、すっかり早朝の気分!!
おはよう・・・まい。今日の朝も、とっても爽やか・・・モーニングショットね!!

そしてきっと。
舞美のあまりの爽やかさに、みんなもわたしと同じ事を感じたんだと思う。
周りのみんなも、舞美につられて一斉に「おはよー!!まいちゃん!!」とご挨拶。
ふふふ。もう18時なのにね。自分で言うのもなんだけど、とっても目出度い楽屋よね、℃-uteって。
だけど・・・。
そんなお目出度い空気の中、まいだけは・・・何かが違ったの。

「こ・ん・ば・ん・わ」

18時に「おはよー」じゃねぇーだろ・・・って。そんな感じの冷めた表情をしながら、わたし達の「おはよー」に「こんばんわ」と返すまいちゃん。
ヤダ!ちょっと、どーしたの?まい??
確かに、この時間に「おはよー」はバカっぽいけど。舞美が「おはよー」って言ってるんだから、別に「おはよー」で返せばいいじゃない。
なにも、「こんばんわ」で返さなくっても。しかも、小バカにしたように、1文字1文字を強調しながら・・・。

「あぁ~あ。チョー寒い」

そう言って手をこすり合わせながら、控え室の椅子に腰掛ける、まい。
いつもに比べて、態度も悪いし・・・どうしちゃったんだろ?なんかヤな事でもあったのかな?学校で・・・。

そして――。

そんなまいの態度に、みんなも不穏を感じたみたい。
なんとなく、(どうしたんだろ?まいちゃん??)って感じの空気が楽屋の中に漂っているわ。
まいの不穏に気づいてないのは、舞美だけみたい。
舞美は汗を流して肉うどんを啜りながら、笑顔で「あ!まいのお蕎麦も、そこにあるからねー」とテーブルの上を指さしている。
そこに置いてあるのは、ざる蕎麦。
遅刻してくるまいの為に、お腹を空かせて来るであろうまいの為に、舞美が一緒に注文しといてあげたざる蕎麦。
だけど・・・ざる蕎麦を見た瞬間。まいは、掃き捨てるように・・・こう答えたわ。

「んだよ。ざる蕎麦かよ・・・。いらねーよ!!」
「?!!」
「寒いのに、ざる蕎麦とか。気が利かねーなぁー」
「?!!!!!」

突然のまいのご乱心な言葉に・・・楽屋の中は一気に凍りついたの。
なっきぃは目をおっきく見開いて、まいの方へと振り向いている。
栞菜はカレーうどんを啜ってる状態のまま、完全にフリーズ。
千聖はビックリして蕎麦を喉に詰まらせてムセリまくっているし・・・。
愛理なんて、驚きのあまり、手に持っていたお新香のお皿を、まっさかさまに床に落としてしまったわ!!
あぁーー!!愛理ぃ!!大変!!落としちゃダメだよ。弁償しなきゃダメじゃない、愛理!!
でも・・・愛理ならきっと平気だよね?
前にわたしのウチでお皿(ニトリ製)を割っちゃったときも、「ごめんね」と言って後日、ロイヤルコペンハーゲンの・・・なんか凄いのくれたもんね。愛理。
あの時はありがとうね、愛理。また割ってね。愛理。


そして・・・。
まいの予想外な反応に、舞美はなんだかポカーンとしちゃっている。
そうよね。せっかくお蕎麦をまいの分もとっておいたのに、ここで文句言われるなんて思わないわよね。
それに・・・寒いのにざる蕎麦で気が利かないとか言われても・・・遅刻でいつ来るか解らないから、温かいお蕎麦は伸びちゃうから頼めないよね。
舞美は悪くない!!舞美はなにも悪くない!!わたしの舞美が悪いわけないわ!!
もしも舞美が悪だと言うのなら・・・世界中の人間全てが邪悪よ!!ラスボスよ!!カオスよ!!
ベリーズのメンバーに至っては、全員が破壊神よ!!全員がホクトセイクンよ!!ムドオン!ムドオン!!


そしてみんなも、やっぱり同じ事を思ったみたい。
なっきは椅子から立ち上がり、まいへと近づき、諭すようにまいの肩を叩いて答えたわ。
「なに言ってるの?まいちゃん・・・。まいちゃんが来るまでにお蕎麦が伸びちゃうといけないから、舞美ちゃんが気を使って、ざる蕎麦を頼んでおいてくれたんだよ?」
「しらないよ、そんなの。あたしは温かいのが食べたかったんだよ。」
「じゃぁ・・・温かいお蕎麦がいいなら、わたしのお蕎麦・・・代わりに食べる?」
「卵とじ蕎麦なんて、地味なのいらない・・・」
「地味!?」
普段から「地味扱い」はされがちのなっきぃだけど―。
まさか、お蕎麦でまで「地味扱い」されると思ってなかったみたい。
なっきぃは密かにショックを受けたみたいで、「じ、地味かなぁ・・・卵とじ蕎麦・・・」と、栞菜に問いかけているわ。
聞かれた栞菜はちょっと困った様子で。「あ、でも。なっきぃらしくていいと思うよ?!卵とじ蕎麦」と、否定も肯定もせずに曖昧な回答・・・。
でも、「なっきぃらしい」って事は、つまりは「地味」って事なんだろうな~と、わたしは密かに思っちゃいました。ごめんね、なっきぃ。

そんなこんなで。
すでに撃沈ムードのなっきぃ。
しきりになっきぃは、「そっか。卵とじ蕎麦って地味なんだ・・・」と繰り返し呟いている。
肩を落として、1人で「地味なんだ・・・」と呟いているなっきぃは、フォローのし様がないぐらいに、確かに地味で・・・なんだか私は、胸が詰まる思いでした。
元気出して、なっきぃ。地味な女の子の方がしおらしくていいって、うちのパパ(昭和)が言ってたから、元気出して!!なっきぃ!!
なっきぃは息子の嫁さんにしたいタイプだって、パパ(昭和)が繰り返し言ってたから、元気出すの!なっきぃ!!
・・・・・・・・・。
それよりも、問題はまいちゃんだよね。
どうしちゃったんだろう、まい。なんかヘン。そんなに温かいお蕎麦が食べたかったのかな?



「ねぇ・・・まい。じゃぁさ。あたしの鍋焼きうどん、食べなよ!!」

ざる蕎麦を与えられてすっかりスネているまいに、わたしはあったか鍋焼きうどんを差し出してあげました。
卵とじ蕎麦は地味扱いされてたけど、鍋焼きは地味扱いされないでしょ?!
冬と言えば鍋焼き。鍋焼きといえば冬。俳句の季語に使われるほど、鍋焼きはメジャーな冬の風物詩だもんね!!

だけど。

まいちゃんは鍋焼きをちらっと垣間見た後、呆れたような表情を浮かべて、
「・・・・なに?またえりかちゃん、鍋焼き食べてるの?」と呟いたわ。
え?なに?またって言われるほどでもないでしょ?鍋焼き。この冬に入って、まだたった7回目だよ?鍋焼き。

「そ、そう?そんなにあたし、鍋焼き食べてるかな?」
「いつも鍋焼き食べてるじゃん!そんで、2回に1回は舌を火傷してるじゃん!!」
「うん。あたし、猫舌だから、火傷しちゃうんだよね・・・」
「だったら食べなきゃいいのに、鍋焼きなんて」
「でも――。なんか鍋焼きって冬に食べたくならない?なんだろ?あったかオーラがチョー出ててさ!!」

そう、鍋焼きから放射線状に漂うあったかオーラ!!ラッキーなオーラ!!わかるでしょ?!
鍋焼きオーラ!!私は受ける!!
すると。熱く鍋焼きを語るわたしの横で、舞美も大興奮しながら「あ!わかる!!鍋焼きってあったかオーラあるよね!!」と大賛同!!
でしょ?!そうでしょ?舞美!!やっぱり舞美は、私のステディね。
やっぱりわたしたち、心も体も繋がってるのね。って・・・キャーーー!!体もですって!!舞美のエッチィーーー!!


「なんかさ。鍋焼きって、℃-uteみたいなあったかオーラ出てるよね!!!」

そう言って、舞美は最高の笑顔でガッツポーズをしているわ。
キャッ!さすが舞美!!なんて素晴らしい言葉。「℃-uteみたいなあったかオーラ」。間違いなく、今年の流行語大賞にノミネートだわ!!
金髪ブタ野郎なんかよりも、遥かにステキで温かな言葉だわ!見習いなさい、泰葉!!

・・・・・・・

だけど。。
当のまいちゃんは、全然舞美の言葉に感銘を受けてないみたい。
それどころか、まいの表情がさっきよりも冷めた目つきになっている。そしてまいは、掃き捨てるようにこう答えたの・・・。

「バッカじゃないの?」
「え?」
「℃-uteのどこがあったかいの?」
「・・・・・・え」
「あったかくねーよ。℃-uteなんて、別にあったかくねーーーよ!!!」
「!!!!?」

その瞬間。
まい以外のメンバーが、℃-uteを罵倒するまいの言葉に一斉に凍りついた瞬間。

「違う!!℃-uteはあったかいよ!!」

だれよりも先に否定の言葉を上げたのは、栞菜だった。
さっきまで黙り込んでいた栞菜だけど、栞菜は目に涙を浮かべながら、まいの言葉を大声で否定してくれたわ。

「℃-uteはあったかい!鍋焼きよりもあったかいもん!!!」
「栞菜・・・」
「だって。途中から入ったあたしなんかを、こんなに優しく受け入れてくれたんだよ?℃-uteのメンバーは?!」
「・・・・・・・・」
「もしもあたしが入ったのが、℃-uteじゃなくって、ベリーズだったら・・・」
「・・・・・・・・」
「きっとあたし!!ベリーズと℃-uteで合同の仕事がある度に、℃-uteの楽屋に入り浸ってた!!」
「・・・・・・・・」
「℃-uteのイベントがある日は、休日出勤をしてでも、℃-uteイベのゲストとして参加してた!!」
「・・・・・・・・」
「たまの食事も、きっと℃-uteのメンバーとだけしてた!!」
「・・・・・・・・」
「きっとあたし。ベリーズの中で・・・桃ちゃんみたいな・・・惨めな立場になってた!!!」
「かんなぁ~~!!」

あまりにも悲痛なその叫び。
わたしは思わず、栞菜をキツく抱きしめた。
そう。そうだよね・・・栞菜。栞菜は途中から入ったから、きっと色々辛かったんだよね?
でも・・・℃-uteはあったかいから、そんな栞菜を優しく受け入れた。
もしも栞菜が入ったのがベリーズだったら!!あぁ!!考えるだけでも眩暈がする!!!
あの、限りなく『キッズ最強』に近いももですら、今ではあれだけ惨めな立場なのに・・・それが、エッグから途中参加の栞菜だったらと思うと。
きっと栞菜は永遠に、「魔法使いのお婆さんに出会わないままのシンデレラ」状態だったと思う!!
シンデレラって、魔法使いのお婆さんに出会わなかったら、ぶっちゃけ、ただの「いびられドラマ」だよね!!渡鬼だよね!!
てゆっか、ももはあの地獄のような環境で、偉いよね・・・さすが嗣永プロだよね?栞菜。

栞菜を抱きしめたまま涙を流すわたし。
そして栞菜も、胸の中で子猫のように泣きじゃくっているわ。
うんうん。栞菜は1人だけエッグ出身だから、寂しかったんだよね?
でも。栞菜は℃-uteに入って、みんなに優しく受け入れてもらえたから・・・本当に幸せなんだよね?
わたしが何度も栞菜の背中を撫でてあげていると、不意に足元に影がさし、振り返るとそこに舞美がいた。
舞美は優しく手を伸ばし、栞菜の頭を撫でてあげたわ。

「そう・・・。℃-uteのみんなはあったかいよね?栞菜」
「舞美ちゃん・・・」
「でもね。℃-uteのみんなが栞菜を暖かく迎え入れたのは・・・栞菜自身も、凄く、暖かい子だったからなんだよ?」
「舞美ちゃん!!!」

舞美のキリスト宣教師の様な後光さす言動。
栞菜は感動のあまり、両手で顔を覆いながら泣き崩れている。
そして。なっきぃも、愛理も、ちっさも、ダイアモンドの涙を流し・・・あぁ!!なんて、心の底からあたたかなグループ!!
アイラブキュート!!アイニーヂューキュート!!!アイウォンチューマイミ!!

・・・・・・・。

だけど。
いつもだったらこのまま、℃-ute&舞美コールをして終わるはずの展開だけど、
今日だけは。
そうは問屋が卸さなかった・・・。

「なんなの?あんたたち。ホント、ウザいんですけど?!」
「まい?」
「特に、舞美ちゃん。チョーめんどい!!」

とても・・・普段の優しいまいからは考えられない、冷たい言動。
名指しで「めんどい」扱いされた舞美は、もはや顔を真っ青にして硬直している。
今まで℃-uteとして生きてきて、一度だってわたしたちは、こんな展開に出会わなかった。
みんな舞美が好きだから、愛してるから、誰一人として、舞美を悪く言う人間なんていなかったのに・・・何故?!!
まいちゃんのご乱交に、ちっさがなんとかストップをかけようと、「じょ、冗談だよね?まいちゃん!?アハハ、冗談キツいよねー」と笑って誤魔化そうとしている。
だけど、まいの一度流れ出た感情は止まる事を知らなかった。

「冗談じゃねーよ」
「まいちゃん・・・」
「じょうだんじゃねーよ!どいつもこいつも、ウザいなぁー!!!」

そして、まいは。
他のメンバー6人を冷めた目で見渡しながら、こう答えたの。

「今日。ガッコで言われたんだよ、クラスメイトに」
「・・・・・え?」
「℃-uteはキモいんだよって!!ハコ推しグループ、きんもーって!!」
「・・・・・・・・・」
「℃のくせに、お前のグループはB組かって!!3年B組かって!!」
「・・・・・・・・・」
「さては、お前んとこのリーダーは金八かって!!海援隊かって!!!」
「・・・・・・・・・」
「『手毬』の次は、『贈る言葉』のカバーじゃね?って・・・みんなに笑われたんだからね!!!」

それは・・・。
まいが控え室に現れてから、初めて見せた悲痛な表情だった。
まさか、そんな事があったなんて・・・。なんて酷いクラス!!許せない!!わたし許せない!!
悔しさの余り、思わず「鍋蓋の盾と大根の剣を持って、まいのクラスに粛清に行ってやろうかしら!!!」と言ったら、
まいに「やめてよ!バカ!!ウザイ!!」と切り捨てられたわ。
ひ、酷い。バカって言われた・・・。舞美にもバカって言われたことないのに・・・。

「そもそもあたしは、舞美ちゃんみたいな熱血漢、好きじゃないんだよ!」
「まい・・・」
「金八の似合うオンナより、金髪の似合うオンナの方が好きなんだよ!!」

舞美を罵倒してる事に関しては許せないけど、なんだか上手い事を言っているまいちゃん。
金八より金髪か・・・。上手いな、まい。さすが、℃-ute随一のMC職人ね!!悔しいけど上手いわ!!
そして。
舞美はもはや言われ放題だけど、まいの言いたい事がなんとなく解るみたい。
悲しそうな表情で、だけど無理矢理笑顔を作って、まいの言葉に笑いながらこう答えたわ。

「そ、そうだよね。金八みたいなオンナより、金髪似合うオンナの方が、カッコイイよね」
「・・・・・・・・・」
「じゃ、じゃぁあたし。まいが喜ぶなら、き、金髪にしよっかな?!そうする事で、まいが喜んでくれるなら・・・」

そんな。あまりに献身的な舞美の発言。
だけどまいは、そうやって献身的な態度を取られるのがイヤみたいで・・・顔を僅かに伏せたまま「別に。そーゆー問題じゃないし・・・」とぼやいたわ。
でも。一直線な舞美は、もはやまいの発言が聞こえてないみたいで、「あ、でも。金髪ってどうやってやるんだろ?金粉とか塗るのかな・・・?」とブツブツ呟いている。

うん――。
わたしもさすがに金髪にした事はないから、詳しくは解らないけど・・・。
少なくとも、そんな『金閣寺建立』のようなやり方ではないと思うよ??舞美。
それに。舞美は青鹿毛のサラブレットの様な、光沢ある美しい黒髪が、一番似合うと思うし・・・ね。



すると・・・。
まいは呆れたようにため息をつき、舞美に向かってふてぶてしくも・・・こう答えたわ。
「もう、いいよ。舞美ちゃんはどーせ、金髪なんて似合わないんだから。」
「まい・・・」
「金髪とか似合うの、絶対、みやだよね。あぁ~あ。みやがリーダーだったら良かったな」
「ま、まい!!!」
「みやがリーダーだったら良かった。オシャレでクールでカッコ良くって・・・こんなダサ暑苦しいリーダーより、みやがリーダーだったら良かった!!」
ついに、禁断の一言を言ってしまう、まい。
まるでイエス・キリストを裏切るユダの様な逆徒に、周りのメンバーの目線は途端に厳しいものとなる。
そして――。

「ちょっと!!まいちゃん!!いい加減にしなよ!!!」

誰よりも最初にその非難の声をあげたのは、普段はおっとりしているハズの愛理だった。
まさか愛理がそんな怒鳴り声を上げるとは思わなくって、わたし達は驚嘆の眼差しで愛理の動向を見つめたのでした。

「まいちゃん。それは違うと思うよ・・・?」
「なんだよ・・・」
「それは間違ってる。まいちゃんは間違ってる!!」

いつもの愛理からは考えられないぐらいの、愛理の厳しい目つきと口調。
あまりの威圧感に、まいはホンの僅かだけど気後れしている様子だった。
でも・・・そう。そうだよね、愛理!!まいの発言は間違ってるよね?!絶対違うよね!!

「舞美ちゃんより、みやがリーダーの方が良かったとか・・・そんな事言うのは間違ってる」
「別に、間違ってなんか・・・」
「間違ってる!!まいちゃんは何も解ってない!!!だって・・・」

うん!わたしもそう思う!!まいは間違ってるよね!!愛理!!
みやはオシャレでクールでカッコよくってって言うけど・・・。
確かにオシャレとクールでは負けてるかもしれないけど、舞美だってみやに負けないぐらいカッコい―――。




「だって、みや!!全然、カッコ良くないじゃん!!!」




・・・・・・・・・・。
あーー。そっちかぁ~~~。
あ・・・あいりぃ~~~。
別に何が台無しってワケじゃないんだけど・・・。
なんか台無しっぽいよぉ、あいりぃ・・・。

だけど――。
愛理は周りから漂う「そこのB型、空気嫁」オーラに全く気づいてないみたいで。
それはもう、熱く、カッパを語るときと同じくらいのテンションでみやを語りだしたのでした。

「まいちゃんまで、そんな。りーちゃんみたいな盲目発言しないで!!恥ずかしい!!」
「・・・・・・・・」
「みやを解ってなさすぎ!!みや。全然クールじゃないし!!てゆっか、バカだし!!」
「・・・・・・・・」
「引き算を間違って、全部足し算で計算してたし!!算数のテスト、2歳も年下のあたしの、半分ぐらいしか得点出来てなかったし!!」
「・・・・・・・・」
「Buono!のMCで、いつも役立たずだし!!トークに困ると、すぐにももに助け求めるし!!」
「・・・・・・・・」
「ぶっちゃけ、みや!『顔だけセンター』だし!!」
「・・・・・・・・」
「そもそも、ももの『自称リーダー』をネタ的に否定はするけど、ホントはももに、さっさとリーダー押し付けたいタイプだし!!」
「・・・・・・・・」
「そう!まいちゃんは何も解ってない!!みやは全然カッコよくない!!どちらかと言うと、ダメさに萌えるタイプなの、みやは!!!まいちゃんはなにも解ってない!!はっきし言って、素人すぎ!!!」

し、素人って・・・。
ま、まいは、なんのジャンルの素人なの?愛理?
愛理が言う『素人・玄人』がなんのジャンルの話なのか、さっぱりわからなかったけど・・・。
それはもう、愛理はみやを語り倒したわ。この後も、30分ぐらい、みやを語り続けたわ。
こんなにキモい感じの愛理を見たの、℃-uteのメンバーはみんな初めてだったから、正直みんな・・・引いてた。
栞菜に至っては、なんかショックを受けてるっぽかった。
そして、なんだか良く解んないけど・・・愛理をこんな感じにしちゃうみやって、凄いんだなぁーって、心の底から思ったわ。
別の意味で・・・。

「そう。みやは『顔だけセンター』でしょ?そんなみやに比べたら、『顔も気力もセンター』の舞美ちゃんの方が、遥かにマシだと、あたしは思う!!」
「あいり・・・」
「舞美ちゃんがリーダーの方が、みやがリーダーより、全然マシ!!100倍ぐらいマシだと思う!!」
「あ、あいり・・・」
「同じダメ人間でも。気力があって懐が広い分、舞美ちゃんのほうが、比べ物にならないぐらいマシ!!」
「あ、ありがとう!!愛理」

そんな愛理のフォロー(?)に感激したのか、舞美は嬉しそうに愛理を抱きしめたわ。
正直、舞美のリーダーもあくまで「みやよりマシ」扱いだったけど・・・。でもまぁ、フォローはフォローだもんね!!
舞美も深く考えずに喜んでるし、万事OK!!
あぁ、なんて美しい友情!!抱き合う2人!!これぞ、友情の証!!友情の抱擁ね!!
そう、決してこの抱擁は愛情ではないわ!!ま、舞美が愛理に持ってる感情は、愛情じゃなくて友情だもん!!愛情は、わたしにしか持ってないもん!!!
この抱擁はあくまで友情だもん!!!そう、そうよね?舞美!!
そして。まいも、愛理のあまりの「みや説得力」に、何も言い返せずに悔しそうに俯いている。
うん。仕方ないよ、まい。あの勢いでみやを語られたら、誰も何も言い返せないよ。って言うか、言い返したくないよ。同族に思われたくないもん。


こうして・・・。
しばらくまいは、悔しそうに俯いた後。キュッと唇を噛み、その顔を上げたのでした。
そして、ゆっくりとした口調で、こう答えたのでした。

「別に・・・みやなんてどーでもいいんだけどさ・・・!!」

さっそく。まいの中で「どーでもいい」に格下げになっている、みや。
あぁ・・・。み、みやって、歌ってるときとか、私生活のスタイルとかに関してはフツーにカッコイイと思うんだけど・・・。
なんか、愛理のせいで、まいの中で全否定になってるっぽい。ご、ごめんね、みや。凄いとばっちりっぽいよね、みや。ごめん。

「あたしはやっぱり、舞美ちゃんに納得できない!!」
「まいちゃん・・・」
「だって、考えてみなよ!!みんな舞美ちゃんに騙されてるんだよ!!舞美ちゃん、みんなが思ってるほど、リーダーらしい事なにも出来てないじゃん!!」
「・・・・・・・・」
「バカだし天然だし体育会系だし。なっきぃや愛理やあたしの方が、ずっとしっかりしてるじゃん!!」
「それは、そうだけど――」

みんな思い当たる所が確かにありまくりみたいで・・・。
愛理もなっきぃも栞菜も千聖も、思わず顔を伏せている。
大根おろしをおしぼりだと思って掴むし、3分の間に同じところに2回もこぼすし、なっきぃの口に柿ピー流し込むし・・・他にもあんな事、こんな事。
思わずなっきぃも、「確かに。舞美ちゃんはリーダーと言うより、むしろ、手の掛かる子っぽいトコもあるけど・・・」と呟いてる。
なんてこと!あまりにも思い当たる所がありすぎて、みんなの気持ちがまいの方に流れていくわ!!
そして、その瞬間。ここぞとばかりに、まいがみんなにまくし立ててきた。


「でしょ?そーでしょ?!みんな目を覚ましなよ!!みんな騙されてるんだよ!!舞美ちゃんなんて別に―――」


パシィ――!!


「・・・・・・・え?」

刹那。思わず、自分の頬を押さえるまい。赤く腫れた頬。
まいの目線の先には、わたし。
そう。気が付いたらわたしは、舞美の事を悪くまくし立てる、まいの頬を叩いていた。

「え、えりか・・・ちゃん?」
「目を覚ますのは、そっちでしょ?まい・・・」

まさかわたしがまいの頬を叩くなんて、誰も思わなかったみたい。
叩かれたまいも、周りにいるメンバーも。みんな目を大きく見開いて、わたしの事を観ている。
そして、好き勝手に罵倒されていた舞美も・・・。
あれほど好き勝手に言われていたにも関わらず、まるでまいを庇う様に、わたしとまいの間に割り込んできたわ。

「え、えり。な、なにも叩かなくても・・・」
「舞美・・・」
「あたしは別に、何言われても構わないし。それに、まいの言うとおり、あたしはダメなリーダーだと思うし・・・」
「バカ言わないで。舞美。あなたがダメなリーダーじゃない事ぐらい、私が誰よりも一番知ってるもの」
「えり・・・」

舞美はキュッと口を噤み、何も言わずわたしの事を見つめている。
そして他のメンバーも、わたしの事を・・・。
わたしは、ビックリと目を丸くしているなっきぃに、その目線を合わせたのでした。

「なっきぃ・・・知ってる?」
「え?」
「なっきぃが一時期、一生懸命・・・『なっきぃ』ってあだ名を流行らせようと、頑張ってた時期が合ったでしょ?『ナカサキ』ってあだ名が嫌で・・・」
「あ・・・うん。あった!!なんとかみんなに、『なっきぃ』って呼んで欲しくって・・・」
「あの時。舞美が菓子折りを持ってベリーズの楽屋に行き、なっきぃが『なっきぃ』のあだ名になった事を、ベリーズのみんなに知らせに行ってくれたんだよ?」
「え?!!ま、舞美ちゃんが!!!?」

そう・・・。
カオス揃いのベリーズメンバーが、中々『ナカサキちゃん』と言うあだ名を忘れてくれないから・・・。
舞美がわざわざ東京ばななを持って、ベリーズの楽屋を訪ねてくれた。
ベリーズのメンバーは食い物に目がないから、みんなあっさりと「あ、なっきぃと呼べばいいのね、OK!OK!」と受諾してくれたわ。

そして。

そんな新事実を知り、なっきぃは目に涙を貯めて舞美の顔を見つめている。
なっきぃはそして、震える声で舞美へと呼びかけたわ。

「舞美ちゃん・・・ありがとう。ど、どうりで、あのベリーズのメンバーが・・・あっさりと『なっきぃ』って呼んでくれるようになったと思った・・・」
「うん。でも・・・あたしの力量が足りなくて。熊井ちゃんだけは・・・『なかさきちゃん』って呼ぶのを辞めさせられなかった」
「仕方ない。仕方ないよ!!友理奈ちゃんは仕方ないよ!!彼女は治外法権だから、仕方ないよ・・・。ありがとう。」

そう言ってなっきぃは、舞美に抱きつき、その肩に顔を埋めた。
うん。そうだよね、なっきぃ。熊井ちゃんは仕方ないよね。熊井ちゃんに関しては、誰も責められないよね。
あの女は『外ナンバー』だから、例えあの女に追突されても・・・私たちは、おとなしく泣き寝入りするしかないのよね!!

そして・・・私は零れ落ちる涙をそっと拭い、今度は愛理の顔をみつめた。
愛理はキョトンとした顔で、わたしの顔を見つめ返してきたわ。

「えりかちゃん?」
「なっきぃだけじゃない。愛理も・・・だよ?」
「え?あたしも?」
「愛理のお気に入りのカッパぐるみ。あれが、着すぎたせいで、破れちゃった時があったでしょ?」
「う、うん・・・」
「あれを、コッソリと修繕してくれたのも。舞美なんだよ?」
「え?!ま、舞美ちゃんが?!!」

愛理がバカみたいに着まくって、破れてしまったカッパぐるみ。
舞美はこっそりと、そのカッパぐるみを修繕しておいてあげたんだ。
破れた所にハートのアップリケをつけて、「愛理。これ、気に入ってるからね。またこれで着れるよね!」と、わたしに笑いかけたんだっけ。

「舞美ちゃん。あ、ありがとう・・・。あれ、直してくれたの、舞美ちゃんだったんだ・・・」
「うん・・・。あたし、お裁縫とかヘタだから・・・あんま上手く出来なかったけど」
「そっか。舞美ちゃんだったんだね。どうりでハートのアップリケとか、ダサ・・・・・・・カワイイなぁ~って思ったんだ。ありがとう、舞美ちゃん」

あぁ、美しい友情!!
愛理も嬉しさのあまり泣きながら、舞美の体にギュッと抱きついているわ。
そうだよね。知らぬ間にお気に入りのカッパぐるみを修繕してくれてたなんて、嬉しいよね?!
なんか「ダサ・・・」って言いかけてたような気もちょっとするけど、よく堪えてくれたね。偉いね、愛理!!

そして。
舞美がみんなの知らない所で、色々と貢献してくれてたのは、愛理やなっきぃだけじゃない。

「ちっさのお弁当に、いつもこっそり、一品増やしてあげてたのも舞美だし・・・」
「舞美ちゃん・・・」
「栞菜が℃-uteに入ったばかりの頃。栞菜に早く馴染んでもらえるように、スタッフさんに仲良くしてくれるように呼びかけてたのも舞美!!」
「ま、舞美ちゃん!!!」
「みんな舞美に助けられてるの!!あたしたちは、みんな、舞美に救われてるのよ!!!」

そう。
舞美はまるで、聖職者。
決して恩着せがましい事はせず、みんなが知らない場所で、こっそりとみんなの為に尽くしてくれた舞美。
だから誰も舞美に感謝をしない。でも舞美は、それでも舞美は・・・みんなの幸せな笑顔を見れるのが、何よりの幸せだと言った。
嗚呼・・・素晴らしい舞美。素敵な舞美。I LOVE 舞美。
教徒・梅田えりか。あなたの美しき御心に、どこまでもついて行くわ、舞美――。

「勿論。舞美はまいの為にも、沢山の事をしてくれてるのよ?」
「え?」
「キューティガールズの存続希望のハガキ。舞美がワザワザ地元の商店街に呼びかけて・・・300通ぐらい増やしてくれたのよ?!」
「え・・・ま、舞美ちゃんが?!」
「まいが『つんくとか来て嬉しかったです』って、つんくさんを呼び捨てした件も・・・℃-uteが結成した直後に、深々と謝りに言ってくれた」
「そ、そんな・・・舞美ちゃんが・・・わざわざ。そんな昔のことまで?」
「まいが藤本さんの歌に参加した時だって、舞美が藤本さんの所に『どうか、手加減してやってください』ってお願いに行ってくれたのよ!」
「だ、だから・・・。あの藤本さんが・・・あの時・・・妙に優しくして・・・くれた・・・んだ?」
「そう。これでもまだ、まいは・・・。舞美がリーダーに向いてないと言うつもりなの!!?」

思わずわたしは、声を荒げてしまいました。
こんなに同じ℃-uteのメンバーを怒鳴りつけたの、生まれて初めてだった。
だけど、わたしはどうしてもみんなに知って欲しかったの。
舞美の優しさ。舞美がどれだけ、わたし達℃-uteメンバーの為に尽力してくれてるのかを・・・。

しばらくの間。
みんなは呆然として、言葉を失うだけだった・・・。
だけど、その沈黙を最初に破ったのは、まいだった。

「ごめんなさい。舞美ちゃん」
「まい?」
「ごめんね、舞美ちゃん。あたしの為に、ありがとう!!」

控え室の中に響きわたる、まいの声。
すると、それを皮切りに・・・なっきぃや愛理やちっさーや栞菜達も次第に・・・

「ありがとう、舞美ちゃん!!」
「み、みんな・・・」
「本当にありがとう!!舞美ちゃんありがとう!!」
「大好き、舞美ちゃん!!ありがとう!!」
「ありがとう!!舞美ちゃんが一番大好きだよ!!!」

控え室の中にあふれ出す、「舞美ありがとう」コール!!
そう、℃‐uteのメンバーはみんな解ってる。
舞美はわたし達のメシア。舞美はいつだってわたし達を救ってくれる救世主だって事を!!!

舞美は「みんな、ありがとう!!」と言って、嬉しさと照れくささが同居したような顔で笑っていた。
そして、控え室で突然起こった「舞美ありがとう」コールに、爽やかすぎる笑顔で、ピースで答えるバカっぽい舞美。
そんな舞美も、サイコーにステキだよ、舞美・・・!!


こうして――。
反抗期だったまいが、素直に舞美に謝ってくれて・・・
℃-ute最大のピンチも、無事に丸く収まった折。
喜びで鼻をすするわたしの肩を、舞美がそっと抱き寄せてくれたのでした。

「え?ま、まいみ?」
「・・・ありがとう。えり」

そう言うと舞美は、わたしの正面に立ち。
そのブラックパールの様な瞳で、わたしの目をじっと見つめてくれた。
「・・・舞美?」
わたしが不思議そうに小首をかしげると、舞美は爽やかな笑顔でこう答えたの。

「あたし、知ってるよ。あたしが、こっそりとみんなの為に努力しているのと同じように・・・」
「・・・・・・・・」
「いつも、えりもこっそりと、あたしの事を支えてくれている事」
「ま、まいみ!?」
「いつもありがとうね、えり。」

あ・・・・。
あ、あ、あ、あ、あ、あぁーーー!!
なんてステキな言葉。なんて爆レス!!
ま、舞美からわたしめ如きに、なんてもったいないお言葉!!
そのブラックパールの様な眼差し。黒い宝石に、なんだか心まで吸い込まれそう・・・。



あぁ、舞美!!いとしの舞美!!美しき舞美!!
あなたのえりか、梅田えりか・・・。
あなたが望むなら、わたしは永遠に、あなたを支える礎となりましょう!!
この先、あなたとわたしと・・・そしてこの素晴らしき℃-uteに、どんな困難が待ち受けていようとも!!
潰える事なき、SO!!この愛の唄に誓って――。



反抗期
舞美への愛は・・・
繁忙期©


                     BY え・り・か


(えりかの 『舞ちゃん反抗期』 日記  完)



<お・ま・け>

こうして、
すっかりとまいちゃんの「舞美への反抗期」は収まったのでしたが・・・。

「あ!えりかちゃん、おはよーーー!!」
「あぁ、みや。おはよーー!!」

今日はベリーズと℃-uteで、合同のお仕事があり、
みやが℃-uteの楽屋に来てくれたのですが・・・。

「まいちゃん、おはよーーー!!」
「・・・・・・・・」

みやの挨拶に、冷たい目線を向けるまい。
そして、まいは掃き捨てるように答えたのでした。

「うっせーな。顔だけセンター!!!」
「・・・・・・・・は?」
「ヘタレが移る!近寄んなよ!!」

そう言って、みやからそそくさと離れて、まっしぐらに舞美のところへ甘えに行くまいちゃん。
みやは一体何が起こったのか解らない様子で、ポカーンとわたしと愛理を見つめている。
「えっと・・・。あ、あたし。なんかまいちゃんに、嫌われるコトした?」
あぁ・・・・えーーーと・・・・。
どーどーしよ?こ、こういうときは・・・なんて言えばいいのかな?あ、あいりぃ??
すると。
愛理はみやに問われ、ぬけしゃーしゃーと、こう答えたのでした。

「あ。まいちゃん、ただの反抗期だから気にしないで」
「反抗期なんだ?」
「みんなに反抗的で大変なんだ。別にみやだけじゃないから、気にしないでいいよ♪」

・・・・・・・。
てゆっか。あんたのせいで、みやに反抗的になったんですけどね。まいちゃん・・・。
愛理。恐ろしいコ――。

こうして。

まいちゃんの℃-ute内での反抗期は、とりあえず沈静化したけども。
(愛理のせいで)期待を裏切られたみやに対する反抗期だけは、
これから半年ぐらいは続くのでありました。
めでたし、めでたし♪


ノノ;∂_∂ル∩<ちっとも、めでたくねーーー!!!

 

(ほんとに お・わ・り)