――車中――


波浪市は神奈川県海沿いの住宅都市。最近ではベットタウンとして人口が急増している。
その中でも、波浪市の東南に位置する波浪区は『高級住宅街』としても知られているのだ。
そして今回の依頼人は、その波浪市波浪区に住む、いわゆるセレブ様からの依頼らしい。
正直、オレなんざぁ一生足を踏み入れることもない土地だと思っていたがな・・・。
世の中とは、どこでどう転がるか解らんもんだ。
俺たちは、依頼人の執事が運転する高級リムジンに乗り込み、現場へと向かっていた。



ル ’‐’リ<何?依頼主は梨沙子お嬢様じゃねーのか?

         川 ´・_・`)<はい。ハムスターはお嬢様のペットですが、ご依頼は雅様より頂戴いたしました

         川 ´・_・`)<お嬢様は日本で帝王学を学ぶべく、従姉妹の雅様のお宅にホームステイしております

         川 ´・_・`)<雅様はお嬢様を妹のように可愛がってらして、この度の事件に、大変、心痛めてまして

ル ’ー’リ<なるほど。それで雅様から警察に捜索願を出してきたワケか・・・

         川 ´・_・`)〃<左様で御座います



ふん。
金持ちのハムスター捜索なんてぇ馬鹿げた依頼だが、
オレはこう言う人情的な話は嫌いじゃねぇ。
妹のように可愛がってる従姉妹の為に、一肌脱ぎたい・・・
そんな雅様の優しさは、
この腐れきった世の中も、満更捨てたモンじゃねぇなーと思わせてくれる。
くだらねぇ依頼だが、雅様と言う人物にひと目お会いするのも悪くねぇと、オレは考えた。

そんな事を思っているうちに、
オレらの乗ったリムジンは、さながら遊園地の入り口か?と思わせるぐらい、
広大な敷地の馬鹿でかい門へとたどり着いた。
「〜〜遊園地」と書かれててもおかしくない程の門には、
その大きさに似つかわしくないほどの小さな表札で、『夏焼』とだけ書かれていた。



ル;’‐’リ<す、すげぇ・・・・・・ホントにここは日本なのか?

从;’w’)<ありえないですよね・・・こんなの。門くぐって、もう5分は車に乗ってますよ

          川 ´・_・`)<はぁ。夏焼様も菅谷財閥に負けず劣らず、屈指の資産家で御座いますから

ル;’ー’リ<か、金持ちってのはいるもんなんだな・・・

Σ ル ’‐’リ<おっ!建物が見えてきたぜ!

ル ’ー’リつ<なぁ、あのデカイ建物が夏焼邸か?やっぱ、すげぇなぁーーー!!

从*’w’)<ホントですね!!なんか興奮してきちゃいましたよ!!!

ル*’ー’リ=3<な、すげぇよな!あんな豪邸、中々お目にかかれないぜ!!!スッゲェーー!!!!

         川 ´・_・`)<?

         川;´・_・`)<あの・・・。あれは雅様の愛黒豹のゴンザレス様の小屋ですが・・・

Σ ル;’ー’リ<え?

从;’w’)<愛・・・黒豹の小屋?

         川 ´・_・`)<えぇ。夏焼邸へはあと3分少々かかります。しばしお待ちください

ルl|l’ー’リ从l|l’w’)<そ、そうですか。それは申し訳ございませんでした



高級住宅街『波浪区』に、これだけの敷地面積。
いったいいくらになるんだか・・・と考えるのは、ヤボってヤツなんだろうな。
そして愛黒豹一匹のために、学校一校分はあるデカい建物。
正直、たかが黒豹の小屋を、こんなデカイ小屋にする意味はあんのだろうか?
・・・・・・・と考えるのも、やはりヤボなのだろうな。

黒豹の小屋がこれじゃぁ、
人間様の住む家は一体どーなってんだ?
・・・・・・・・・・・・・・・。
そんな事を考えていたオレと舞波の目に飛び込んできた家は、
家というのが奇怪なぐらい、それはもう・・・



宮殿だった。




ル;゚ ‐゚ リ从;゚ w゚ )<・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

ル;’ー’リ∩<ちょっと待て、そこの困った顔の人!なんだこの・・・・・・ベルサイユ宮殿は?

          (´・_・`川<清水です。・・・こちらは夏焼様のご自宅ですが、何か?

ル;’‐’リ<な、なんつーか・・・・

ルl|l’ー’リ<ぶっちゃけ、バカらしくなってきたんですけど、オレ・・・

从;’w’)つ<センパイ、それを言っちゃお終いですよ!
  _, ,_
ル;’‐’リ<こんな宮殿に連れてこられてさ。オレら庶民を、金持ちの見世物にしようとしてんじゃねーのか?

从l|l’w’)<そ、そんな悲しい被害妄想はやめてくださいよー、センパイ

         ?(´・_・`川<どうかなさいましたか?お二人様・・・

Σ 从;’w’)∩<あ、いえ。なんでもありません。ちょっと、建物の大きさに緊張しちゃっただけですから・・・

           (´・_・`川<左様でございますか・・・。

           (´・_・`川<緊張なさらずとも、ご自宅と同じようにお寛ぎ下さいませ
  _, ,_
ル;’ー’リ<んなもん、自宅のように寛げるか、ボケッ!!

从l|l’w’)つ<センパイ、依頼人に絡まないで下さいよ!!

          川 ´・_・`)つ<ともかく大広間で雅様がお待ちです。どうぞ、中にお入りください



困った顔の執事はそう言って、
オレ達を『夏焼宮殿』の中へと案内してくれた。






――エントランス――



宮殿に入り、まず最初に目に入ったのは、エントランスホールだった。
吹き抜けとなっている2階まで大階段が伸び、玄関から赤絨毯が引かれている。
赤絨毯の脇には、転々と連なるいくつもの石像。
中世の騎士を模った石像は、今にも動き出さんとばかり。
剣や槍を掲げ、オレたち侵入者を睨みつけていた。


ル;’‐’リ<す、スゲェ…。なんだこりゃ?

从;’w’)つ<あのぉ。い、いきなり動き出さないですよね?この石像…

          〃(´・_・`川<えぇ、ただの石像ですから。ご心配なく

            (´・_・`川つ<では、2階の大広間で雅様がお待ちですので、ご案内いたしま・・・




執事がそう口を開いた、その時だ!
二階から一人の少女が御付きと見られる人物を連れ、
赤絨毯の引かれた大階段を、実に優雅に下って来たのだ。
それはさながら、王家のお姫様。
真っ白なドレスを身にまとい、赤絨毯の脇に佇む騎士の間を堂々と進む、その物腰。
まだ、紹介はされてない。
だが・・・ひと目でこの人物が誰であるか、オレは理解することが出来た。



         Σ川 ´・_・`)<あ、雅様!!

           川;´・_・`)<スミマセン。今、大広間に伺おうと思っていたのですが。

                              構わなくてよ。清水さん・・・>∩ノノ∂_∂ ル从゚ー゚o从

                       私が、勝手にお出迎えしただけですから>ノノ∂_∂ ル从゚ー゚o从

           川;´・_・`)<・・・ご足労おかけします



王者の風格と言うかなんと言うか・・・。
オレと舞波は、しばし執事とこの女性のやり取りに呆然と見入ってしまった。
間違いなく今までオレ達が出会ったことのない、人種。
選び抜かれた人生の勝者。
その女性はオレと舞波を見ると、柔らかな物腰でニコッとオレ達に笑いかけた。



                        では、刑事さん。はじめまして>ノノ∂_∂ ル从゚ー゚o从

                    ノノ∂_∂ ル<わたくし夏焼雅と申しますの、どうぞよろしくお願いいたしますわ

                    ノノ∂_∂ ルつ<そしてこちらは、わたくしのボディガードの須藤茉麻

                           ∩从゚ー゚o从<須藤です!どーぞよろしくとゆいたいです!! 


ル*’ー’リ<あぁ、どうも。波浪警察署捜査一課の嗣永です

从*’w’)∩<同じく捜査一課の石村です!



――夏焼雅。

なるほど、さすがはこれだけ広大な敷地と財産を持つ、ご令嬢なだけある。
その物腰は優雅で気品良く、
また、驚くぐらいの美麗な容姿の持ち主でもあった。
まるで絵にかいたようなご令嬢だ。
オレはそんな雅様の振る舞いに、正直、胸が熱くなるのを感じていた。



ル*’‐’リ<ヒソヒソ…(なんつーか。やっぱご令嬢は身のこなしが違うよなぁ)

从*’w’)<ヒソヒソ…(ですね。見た目麗しく、心美しくってヤツですかねぇ?)

ル*’ー’リつ<ヒソヒソ・・・(おっ。上手い事言うなぁ、舞波。まさに憧れのプリンセスだよな)



オレと舞波は、雅様の気品ある佇まいにすっかり魅了されていた。
こんな美しい方の依頼なら、ハムスター探しなんてチンケな事件も悪くねぇな・・・。
そんな事を思ったりもした。
フン。我ながら、美しい女性には弱いんだからなぁ。全くよぉ・・・。




・・・・・・だが。




まぁ。そう思ったのは、ホンの一瞬だけだったけどな!!!!!!

次の瞬間には、
オレたちの雅様に対する想いは、敬愛から恐怖に変わったのだった。



                   ノノ∂_∂ ル<そうですの。あなた方が、捜査一課の嗣永さんと石村さん・・・

ル*’ー’リ∩从*’w’)∩ハイッ!オジョウサマ!

                   ノノ∂_∂ ル<そう・・・・・
                     _, ,_
                   ノノ∂_∂ ル<・・・・・・・・・・・・・・
                     _, ,_
                   ノノ∂_∂;ル<なんか貧相な方々ね・・・


Σ ル;’‐’リΣ 从;’w’)<エ?

                      _, ,_
                  ⊂ノノ∂_∂#ル<ちょっと清水さん!あなたちゃんと警視総監にお伝え下さいましたの?

       〃川;´・_・`)<ハ、ハイ!有力な刑事を寄越すよう、ちゃんと申し上げました!

         川;´・_・`)<ですから。多分、見た目以上に有能な方々なのではなかろうかと・・・ハイ

     アセアセ 川;´・_・`)∩<それに、雅様に比べましたら、人類はみな、貧相ですし・・・

                 Σ ノノ∂_∂ ル<あら・・・それもそうですわね。清水さん

                   ノノ∂_∂;ル<それじゃぁ貧相なのは仕方ないわ。失礼致しましたわ、お二人さん


ルl|l’ー’リ从l|l’w’)<は、はぁ・・・(な、なにこのしと。怖いんですけど)



こういうとき、なんと言っていいのだろうか・・・。
見た目麗しく、心美しきご令嬢。
そんなオレたちのお嬢様に対する妄想は、ガラガラと音を立てて崩れ落ちた。
なんて言うか、雅様は。
物凄く・・・物凄すぎるキャラクターだった。



ル;’ー’リ∩<あ、あのぉ。それより、事件についてお伺いしたいのですが・・・

                   ノノ∂_∂ ル<そうでしたわね。なんでもお聞きになって、よろしくてよ

ル ’ー’リ<えぇと。梨沙子お嬢さんのハムスターがおとといから行方不明と伺ったんですが・・・

                   ノノ∂_∂ ル<えぇ、そうですの。おとといの晩から突然、ロドちゃんが行方不明に・・・
                     _, ,_
                   ノノ∂_∂;ル<敷地内も探してみたのですけど、なんせ20エーカーも御座いますでしょ?
                           残念ながら見つかる気配がありませんの


Σ ル;゚ ー゚ リ<ハァ?ニ、ニジュウエーカー!?

ヒソヒソ∩(’w’;从<セ、センパイ。20エーカーってどんぐらいなんですか?

ル;’ー’リ<いや、スマン。驚いてはみたが、正直オレもよく解らん・・・

ル;’‐’リつ<あのぉ、そこの困った顔の人。20エーカーって解りやすくいうとどんぐらいなの?


            (´・_・`川<清水です。

           ⊂(´・_・`川<えーと・・・。確か夏焼様の敷地は、25000坪で御座いましたね


ル;゚ ‐゚ リ从;゚ w゚ )<に、25000坪!!!

从;’w’)ノツ<ホ、ホントですか!!?25000坪って、な、に、えぇーーー!!?

                   ?ノノ∂_∂ ル<何を取り乱してらっしゃいますの?こちらの方。これぐらい普通でしょ?
                      _, ,_
                    ノノ∂_∂ ルつ<ただ、梨沙子さんのご自宅に比べるとこじんまりとしすぎてて、
                              ホームステイなさってる梨沙子さんに、少々申し訳ないぐらいですの

ル;’ー’リ从;’w’)<・・・・・・・・・・・・
  _, ,_
ル;’ー’リ∩<ま、舞波。ついて来いよ!ついて行けないと思ったら、負けだからな、オレら!!

从l|l’w’)<ハ、ハイ!正直、この人にはついていける自信ないですけど・・・

从;’w’)∩<センパイがヤルと言うなら、センパイにはどこまでもついて行きます!


                    ノノ∂_∂ ル<では、こんなところで立ち話もなんですし・・・

                    ノノ∂_∂ ルつ<大広間の方へご案内いたしますわ。どうぞ、こちらへ・・・

  _, ,_
ル;’‐’リ∩从;’w’)∩<ウッス!!伺わせて戴きます!!!!



こうして夏焼邸へと到着したオレたちは、
『ハムスター大捜査事件』の第一歩を踏み出すこととなった。

ご令嬢、夏焼雅との出会い。
そして彼女以上のご令嬢と言われている、まだ見ぬ『菅谷梨沙子』の存在。
事件の全貌は、いまだ何一つ明らかにはされていない。

そう。
オレ達の事件はまだ・・・始まったばかりだった。







                  


タイトル   モドル